PdM採用は社内登用か外部採用か|1人目を任せる前に比較すべき5つの軸と判断ステップ

1人目のPdMを置くと決めたあと、多くの経営者が次にぶつかるのは「誰を探すか」ではなく「探す先をどこにするか」という問いです。今のチームにいるエンジニアや営業のメンバーの中に、プロダクトへの理解が深く筋が良さそうな人がいる場合、この問いは一層悩ましくなります。すでにいる人に任せれば早そうだが、その人にPdMとしての型が身につくのか自信が持てない。かといって外部から採用しようにも、プロダクトの背景を一から理解してもらうのに時間がかかりそうだ——どちらの不安ももっともです。本記事では、社内登用と外部採用を比較する5つの軸と、実際に判断するための3つのステップ、そして両者を組み合わせるハイブリッドという選択肢を解説します。

目次

なぜこの判断は迷いやすいのか

社内登用と外部採用のどちらが正解かは、本来プロダクトのフェーズや組織の状態によって変わるはずです。ところがこの判断には、次の2つの理由で迷いが生じやすくなります。

1つ目は、PdMという役割そのものが社内で正式に定義されていないことです。 これまで経営者自身が感覚でこなしてきた業務を、職務として言語化していない状態では、社内の誰を候補に挙げるべきかの物差しも定まりません。「なんとなく筋が良さそうだから」という理由だけで人選を進めてしまうと、任せたあとに期待とのズレが表面化しやすくなります。

📌 関連記事:PdM業務の棚卸しと言語化の方法|「感覚でこなしてきた仕事」を4ステップで整理する

2つ目は、「社内か外部か」という論点と、「正社員か業務委託か」という論点が、頭の中で混ざりやすいことです。 この2つは本来別の軸です。外部採用でも正社員として迎えることはできますし、社内登用であっても一時的に外部の力を借りながら育てる選択肢はあります。まずは「誰に任せるか」の入り口を整理してから、雇用形態を検討する順番で考えると混乱を避けられます。

📌 関連記事:PdM採用は正社員か業務委託か|1人目を迎える経営者のための6つの比較軸と判断ステップ

社内登用と外部採用、5つの比較軸

社内登用・外部採用のどちらが向いているかは、以下の5つの軸で整理すると判断しやすくなります。

  • 軸1:プロダクト・顧客理解の深さ — 社内登用はすでに持っている前提から始められる。外部採用はゼロから積み上げる必要がある。
  • 軸2:PdMとしての型・フレームワークの有無 — 外部採用(特に経験者)は優先順位づけや要件定義の型を持ち込める。社内登用は本人の地頭とOJTに依存する。
  • 軸3:社内の力関係・見られ方 — 社内登用は、昨日まで同僚だった人が優先順位を決める側に回ることへの反発が起きやすい。外部採用は最初から「外の人」として中立に受け止められやすい。
  • 軸4:立ち上がりまでの速さ — 社内登用はプロダクト理解の助走が不要な分、意思決定に加われるまでが早い。外部採用は信頼構築とキャッチアップの期間を要する。
  • 軸5:抜けたあとの穴 — 社内登用は元のポジション(エンジニア・営業など)が空く。外部採用はこの問題自体が発生しない。

以下、それぞれの軸をもう少し具体的に見ていきます。

軸1・軸2:理解の深さと、型の有無はトレードオフになりやすい

社内登用の最大の強みは、顧客が誰で、何に困っていて、これまでどんな意思決定をしてきたかをすでに知っていることです。この前提知識を外部の人に伝えるには、相応の時間がかかります。

一方で、プロダクトを深く理解していることと、PdMとして優先順位をつけたり要件を整理したりする「型」を持っていることは、まったく別の能力です。社内登用の場合、この型を教える役割を誰かが担わない限り、感覚に頼った意思決定が続くことになりがちです。外部採用、特にPdM経験者であれば、この型をすでに持ち込める可能性が高くなります。

軸3:社内登用は「関係性の切り替え」という固有の難しさを持つ

社内登用に特有の難しさが、この軸です。これまで対等な立場で働いてきたメンバーが、ある日から優先順位を決め、他のメンバーの要望に「やらない」と言う側に回ります。本人の実力とは関係なく、周囲が納得するまでには時間がかかりますし、経営者自身も「元同僚だから強く言いにくい」という理由で、実質的な権限を渡しきれないケースが少なくありません。

外部採用にはこの問題がありません。最初から「プロダクトの意思決定者」として周囲に紹介できるため、権限の所在がはっきりします。

軸4・軸5:速さを取るか、穴をふさぐ手間を取るか

社内登用は、プロダクトの文脈をすでに共有している分、初動が速いという利点があります。一方で、その人が元々担っていた役割(主力エンジニアであれば開発力、トップ営業であれば商談力)が抜けた穴を、誰かが埋める必要が出てきます。この採用計画を同時に立てられるかどうかは、見落とされがちな論点です。

外部採用はこの穴の問題を避けられますが、代わりに軸4で触れた立ち上がりの時間というコストを払うことになります。

判断のための3ステップ

5つの軸を眺めただけでは、結局どちらを選ぶべきか決めきれないという経営者も多いはずです。以下の3ステップで、自社の状況に当てはめて考えてみてください。

  1. 今のプロダクトフェーズで最優先なのは「速さ」か「型」かを言語化する。 顧客理解がまだ浅く、探索的に仮説を検証している段階であれば、プロダクトの文脈を知っている社内登用の速さが活きます。逆に、事業がある程度伸びて優先順位づけや要件定義の精度が課題になっている段階であれば、型を持ち込める外部採用が向いています。
  2. 社内候補を具体的に思い浮かべ、5つの軸で仮採点する。 「なんとなく良さそう」ではなく、軸ごとに○△×をつけてみると、期待している部分と、実は懸念がある部分が可視化されます。特に軸3(社内の力関係)は、本人の能力とは別に評価する必要があります。
  3. 一つに絞らず、ハイブリッドの可能性を検討する。 社内登用と外部採用は、必ずしも二者択一ではありません。社内の候補者をPdMとして登用しつつ、型の部分を補うために外部の顧問やメンターの力を借りる、という組み合わせも有効な選択肢です。

よくある失敗:「一番詳しいから」で決め、型を教える機会を作らない

社内登用でもっとも多い失敗は、「このメンバーが一番プロダクトに詳しいから」という理由だけで登用を決め、そのあとPdMとしての型を身につける機会を用意しないまま独り立ちさせてしまうことです。プロダクト理解があっても、優先順位づけや要件定義の型がなければ、結局これまでと同じように経営者への確認が減らず、登用した意味が薄れてしまいます。

逆に、外部採用に意識が向きすぎて、社内にすでに有望な候補がいることに気づかないケースもあります。求人サイトを開く前に、まずは社内の候補者を5つの軸で棚卸ししてみる価値はあります。

具体例:従業員12名、BtoB SaaSスタートアップのケース

従業員12名、創業3年目のBtoB SaaSスタートアップの例です。経営者がプロダクトマネジメントを兼務しており、開発をリードするエンジニアが顧客との折衝にも積極的で、社内では「次のPdM候補」と目されていました。

顧客理解は申し分なかったものの、実際にPdMとして優先順位をつけさせてみると、声の大きい顧客の要望を優先してしまい、事業インパクトに基づいた判断ができていませんでした。型が身についていないことが原因でした。

そこで、この社内候補者をPdMとして登用する方針は変えずに、外部の顧問に週次で壁打ちに入ってもらう体制に切り替えました。半年後には、優先順位づけの根拠を自分の言葉で説明できるようになり、経営者が確認する頻度も大きく減りました。社内登用の速さと、外部の型を組み合わせたことで、どちらか一方だけでは埋まらなかった部分が補われた形です。

📌 関連記事:PdMを業務委託で迎えるときの依頼範囲の決め方|切り分けの5つの視点とドキュメント化のステップ

よくある質問(FAQ)

Q1. 社内登用する場合、前の役割(エンジニアや営業など)は兼務させてもよいですか?

短期的な兼務はやむを得ない場合もありますが、長く続けると本人の意識も周囲の見え方も「PdM専任」に切り替わりません。兼務させる場合は期限を区切り、いつまでにどちらかへ寄せるかを事前に決めておくことをおすすめします。

Q2. 外部採用の場合、正社員と業務委託のどちらがよいですか?

この記事の軸とは別の論点になります。判断軸は関連記事「PdM採用は正社員か業務委託か」で解説しています。

Q3. 社内登用してみて力不足だった場合、あとから外部採用に切り替えられますか?

切り替え自体は可能ですが、社内での見られ方が一度「PdM」として定着したあとの変更になるため、本人・周囲双方への説明は慎重に行う必要があります。最初から「まずは3か月試して見直す」という前提を共有しておくと、切り替えの心理的ハードルを下げられます。

Q4. 社内候補が複数いる場合、どう絞り込めばよいですか?

5つの軸のうち、特に軸2(型の有無)と軸3(社内の力関係)で差がつきやすい部分です。プロダクト理解の深さだけで比較するのではなく、この2軸を含めて候補者ごとに仮採点してみてください。

Q5. ハイブリッド構成で外部の顧問をつける場合、どんな人を選べばよいですか?

社内登用者が持っていない部分、つまり優先順位づけや要件定義の型を、実務経験に基づいて言語化できる人が向いています。単なる知識の解説者ではなく、自社の意思決定に伴走してくれる相手かどうかを見極めることが重要です。

まとめ

PdM採用における社内登用と外部採用の選択は、プロダクト・顧客理解の深さ、PdMとしての型の有無、社内の力関係、立ち上がりの速さ、抜けたあとの穴という5つの軸で整理すると判断しやすくなります。どちらか一方が常に正解ということはなく、今のプロダクトフェーズで「速さ」と「型」のどちらを優先すべきかを言語化したうえで、社内候補を仮採点し、必要であれば外部の力を組み合わせるハイブリッドも選択肢に入れることが有効です。

まずは社内に候補者がいるかどうかを、5つの軸で棚卸ししてみるところから始めてみてください。


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この記事を書いた人

Kayoko Itoのアバター Kayoko Ito プロダクトマネージャー

東京工芸大学芸術学部卒業。IT企業での新規メディア開拓営業、広告プラットフォームの改善、ゲーム系メディア運営を経て、スキルシェアサービスのプロダクトオーナーとして牽引。

現在はフリーランスとして、新規事業・SaaS開発を支援するプロダクトマネージャー・UI/UXデザイナーとして活動。また、プロダクトマネージャーのメンタリングも行っています。

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